呆然自失という言葉がぴったりな状態というのは、そうそう無いと思います。
この時はまさに茫然自失としており、この場に放り出された後もしばらく動けませんでした。
例のブレスを軽く見ていた自分への情けなさとか、ここまで焚き付け続けてきた奴への何やかんやとか、そういうのがすべて、どこかに消えていました。
人間、ショックが大きすぎると、無になりますね。
突っ立っていても何も変わりません。
ここから歩いてどこかに行けということらしいので、歩きます。
どこを歩いてもどれだけ歩いても、もはや敵は出てきません。
世界的には、平和がおとずれましためでたしめでたしなのでしょうけど、こちらは全然めでたくありません。
王宮かぁ……。行きたくないなぁ。
このまま世界の隅っこで静かに朽ち果てたい。
嬉しいとか、そんなことされるの嫌だとか、そういう気持ちも湧いてきません。
すべてを歩いて確かめたわけではありませんが、どの人もお祝いムードです。
こっちの気も知らないで、とは言えません。これまで世界は魔物だらけだったのが、これからはその心配が無くなるわけですからね。喜ばしいのは確かです。
こちらの個人の事情により、私がそのノリについていけないだけです。
いつまでもだらだらしても仕方ないし、とりあえず終わらせようか……。
非常に重い足取りで、王宮に向かいました。
ふーん。
みんなこの調子ですが、こちらも相変わらず虚無状態です。
言われるから動く、みたいな。そんなかんじの。
王室にはこの顔触れが揃っていました。
あの時の言葉は本当に本音だったのかもしれませんね。
理解を受けられず、蔑まれ、疎まれ、竜も失って……
ある意味、こちらよりももっともっと辛い状況ですよね、アムリタお姉さん。
……。
ものすごく、会話したくない。
けど、一応、聞いてあげましょう。言いたいことがあるなら言え。
……。
そう言えば、卵を残してくれましたね……
と、思い出したら。
どこかで聞いた、懐かしい声が聞こえました。本当に。
幻聴ではありません。確かに、ちゃんと、耳に届きました。
あ……
…………ああ。
だから、こういうタイトルだったんですね。